第4章 機械のクリエイト2


  機械を開発するのは、 たとえ大企業でも一人の柔軟なアイディアの持ち主からスタートします。それは 教科書通りの一本道ではないし、かけた時間に比例して成果が出ないのが 開発であります。

  また、機械の構造図は、バカ丁寧な1枚より、ラフな 数枚の構想図からスタートします。 構想に行き詰まったら一歩下がること。 全体構想はあくまで 一人で実施することで、いきなり細分化は不成立の山です。 全体から攻めてやるべきことのみ重点思考してそれ以外は真似をしましょう。 気合を入れた設計と途中で力尽きた図面は見て分かります。 構想はスピードが大切で、いつまでも迷っていては先に進めません。 機械の原価感覚はある程度身につけて交渉に臨んでください。

  • ① 開発とはこういうものです
  • ② 機械クリエイトの技
  • ③ 自分の技術力を上げる訓練
  • ④ 機械の概算金額を見抜く
  • ⑤ 設備設計者のあるある
  • ⑥ 特許を申請しようか。特許になるか、資料
  • ⑦ 展示会で勉強しよう。見に行く、主催する

開発とはこういうものです

開発は一人の柔軟なアイデアの持ち主から

 モノづくりにおいて、技術的な希望、願望は皆持っていて、話だけが盛り上がるものです。しかし、どんな大組織でもアイデアは一人のエンジニアから出てくるものです。具現化はたった一人の着眼がきっかけで、その一人の柔軟なセンスの良いアイデアを周りが育て上げる環境の下で、開発が開始されていきます。そして開発の業務遂行はその思いを持ち続けた人がゴールまで進むことができます。100人程度の大組織でも実はキーマンは5人程度のもの。この5人がいなくなれば、その組織も一気に衰退します。

開発は強烈な業務遂行の気持ちが重要

  総論は改革やチャレンジと騒ぐが、各論は誰も動かないです。トップや上司が自らが引っ張るべきです。 部下へのプレッシャーでは動かないものです。大手の企業は開発の専任者が存在する体制だが、中小企業は受注と開発の掛け持ちが、多いです。たいていは、「笛吹けど踊らず」の状況となるのが常です。

  中小企業の開発担当者が開発指示に対して着手が遅くなる理由は下記のことがあるでしょう。アイデアが思いつかないから先延ばししよう。受注仕事はお客様や営業のニーズがあるし、レールが敷かれて仕事が進めやすいから受注業務を優先しよう。上司はうるさいが、本当はこんなリスクがあるものは余りお客様に売りたくない。

開発は教科書通りの一本道ではない

 白紙の状態から開発を開始するというのは、しっかりした手順書はありません。マネジメントや管理応報などはビジネス書にも多く掲載されいますが、何もない状態からのひらめきに頼る開発のアイデアは、手順などはしっかりしたものはなく、一人の考え抜いた悩みの中から生まれてきます。

 アイデアは漠然とした思い付きでなく、自社の技術をベースに、市場、展示会、文献、カタログ、特許などを見ながら、異業種や違い業界のモノづくりを眺めている中で閃いてくることが多いと思います。アイデアは思い付きではなく、 普段その業種のモノづくりに携わってきている方が、考え抜いていく中で閃くものです。 その閃いたアイデアは単に空想、想像でなく底辺ではそのモノづくりにマッチしたひらめきになっていることが多いです。 日夜、自分らのモノづくりに悩み続けていることが大切です。

かけた時間に比例した成果が出ないのが開発

現場の作業、事務作業、補助作業などは、どちらかというと作業者のかけた時間に比例して成果物が出来上がってきます。しかし、開発的な業務は、作業時間と成果は比例しなくて、アイデアや何かが起こって一気に進むものです。アイデアの豊富なエンジニアならすぐの成果にたどり着きますが、下手な開発担当者は時間ばっかしかけて進まないかもしれません。

品質バラツキの怖さ

  機械の動きが悪いとか、ワークの流れが悪いといったすぐにわかる機械品質不具合は手をすぐ打ち安いです。設備を動かして毎回うまくいかない不具合は原因がすぐ見つかって修正しやすいです。しかし、本当に困ってしまう不具合というものは、100個に1回出る品質上の不具合が厄介であります。たまに思い通りに行かなかったり、品質が外れてしまうのは、なかなか収拾がつきにくいものです。 機械の構想設計者の知識とアイデアと経験で腕を見せるところです。

機械クリエイトの技

はじめは馬鹿丁寧な構想図1枚より、ラフな構想図で数枚を描く

 機械の構想を練るのは、最初の内は一人で実施するのと同様に、全体をざっくり成立性を考えるのに心がけたほうが良い方法です。 じっくり一枚を検討するより、最初は複数枚いろいろな構成を書いていくことです。その中で良い悪いを磨け上げていって一つの案に絞っていきます。

この時に、CADとか使用してもよいですが、スピードの速い経験を持ったエンジニアなら、手書きでラフな構想図を複数枚書いていくほうが早いです。 CADは寸法的な融通性がないために、正確ですが時間がこの段階では逆にかかってしまいます。

構想に行き詰まったら一歩下がる

 機械の全体構想を考えるときに、いろいろ息詰まることも多いと思います。そのような時は一度手を止めて、一歩下がって絵を見直してください。考え方が一歩広い範囲から巡らせることができて、意外な落とし穴に気が付くことがあります。夢中になってしそのまま局部に凝視し続けていると見落とすこともあります。

ワークの上からのクランプを忘れていた。ワークの出っ張りを忘れていて取り出しができない。ワーク対象が複数個あって固定のクランプだと干渉する。アクセスするツールの配線経路を忘れていた。アクチェーターやセンサーが袋小路になって保全ができない。回転軌跡でアクセスする振込ユニットであるが、クランプの解放時と途中で干渉する。ビジョンで検出するが、ユニットが照明の陰になって認識できない。3Dビジョンの2個のカメラは方向が違うために影ができる。

ところでこの機械はクリーン度を要する場所か。ステンレスを使用するブラケットにしないといけないか。など、山のように気になる点が思い浮かびます。

全体からせめて、やるべき事を重点指向し、その他はマネする

 モノづくりの開発にチャレンジするときにはテーマの内容、目標値のハードルの高さ、自分たち組織の技術力をしっかり認識して計画してください。例えば、大型のラインを開発しようとした場合に開発テーマは複数個出てくるはずです。担当者が十分にいない状況です。そのような時は重要なコア技術の開発に集中せざるを得ないため、計画としては重要部に人を割いて、それ以外の開発については、市場の技術やこれまでの従来技術を転用していきましょう。

最重要部にオリジナル性を出した開j発に集中して、それ以外は完成された技術で構成しましょう。 何もかも自分たちでの背伸びしても結局一つでもアウトなら機械は完成せずに、途中で断念してしまうことになります。どこかの会社がやっていることに対して無理やり違うことばかりやる必要はありません。特許的なことがない限り広く外部の知見を利用するべきです。

組織長は複数開発項目の最重要部分の進捗に気を配る

 一つの生産ライン開発にチャレンジするときには、主役のメイン工程の技術課題だけでなく、前後の工程や複数の開発アイテムがミックスされています。 複数の担当者でそれぞれの開発を担当して進ませていきます。しかし、サブ工程の開発や程々の技術開発はそれなりに進むが、メインの画期的な技術開発にはなかなか光が見えてきません。このような状況の時に、意外とメインでない技術やサブの工程ばかり進みが見えてきて、注目が集まり、メンバーもそこに張り付き状況になってくることがあります。メインの技術開発は重要ということが頭ではわかってきていますが、意外と腹に落ちていなくて後回しであったり、一担当者にまかせっきりで進みが遅いです。管理者はこの状況を常に把握して、メインの技術開発の方向を早く見極めることです。従来技術に戻すか、メンバーを集中させるかして対応してください。 ラインは一つが欠けると他が成立しても世に出ることはありません。最も遅れている部分こそチーム全体でカバーしたりして常にコントロールをすることです。

全体構想は一人から、いきなり細分化は機構の不成立、違和感などが発生

大きな機械の構想を練るのは、最初の内は一人で実施するべきです。 全体の成立性や絵が見えてない段階で数人の設計者やエンジニアに絵を分担させるのはよくありません。 個別のユニットは成立できても隣通しを集めるといまいち成立しなかったり、統一感がなかったり、コンパクト感がなくて飛び出したりすることが良くあります。最初はあくまで一人で全体構想を練ってから、そのあとで数人に分担させてください。

バランス感覚が大切

 機械の技術開発というのは意外とトレードオフのところが多いです。 相反する項目のどちらも成立させるバランス感覚で機械の構成を考えます。 望むべき専用機械の姿は、生産ワークの品質確保、生産量が大きく、コンパクトで設置面積が小さく、保全性が良く操作性もよい、その上で投資金額の低いものです。どれも簡単ではないはずで、相矛盾する技術や項目を構想しなおしながら最適な姿に落としていく必要があります。 高機能や高性能なセンサー類の集合体では性能はいいかもしれませんが、コストは高くなってしまいます。また、機械を納入する現場では操作できる人や、保全の方の経験に沿ったものがベストで、やたらハイテクの集合がいいとは限りません。

気合を入れた設計と力尽きた設計は見てわかる

 機械の全体構想を考えるて、詳細構想を成立させた後に、ホッとしてそのまま組織全体に詳細設計をバラまいたときによくあるケースです。ライン全体ができた時に成立はしているが何か統一感が悪い。 カバーや制御盤の配置、付帯機器の並び、作業者の作業性、保全の人のアクセス方法といったものが何かデコボコしたレイアウトになったり、一部が飛び出したりしていることがあります。

 ある程度ライン全体が見えてきたときも、ライン全体の統一感、デザインをしっかり煮詰めてください。この段階で時には、もう一度初めの段階の重要寸法の見直しもあることが出てきます。

自分の技術力を上げる訓練

打ち合わせの場では、ポンチ絵を一瞬で描ける技を磨く

お客様とか関係部署の方との機械の仕様がためを早く、正確に進める技です。 これができると3倍速いです。

打ち合わせの中で、その場で即座にポンチ絵を書き、テーブルの上でお客様と確実な仕様を握ることができたら素晴らしいです。 参加者の目は、絵を見ながら次々と具体的に話が育っていきます。

 言葉だけの打ち合わせでは、一旦打ち合わせを実施して、一週間後に絵を持って行って、また打ち合わせを行うという、面倒な時間ばかりが発生してしまいます。 つまり、打ち合わせてるその場で、直接こういったものはどうですかという絵を示せば、話が非常に早いということです。そのためには、自分で簡単に走り書きで絵を即座にかけるように訓練していくと便利です。できればその絵は3次元的なポンチ絵が皆にとってわかりやすいです。 CADで絵をその場では描けませんし、正確だが融通が利かないため、アイデア構想にはポンチ絵の方が考えが早くまとまるものです。

検査の様子を見て、難しさを理解する

 高齢化によって工場の作業者が少なくなってくる現代において、よくある作業現場からのニーズとして、検査作業を自動化してほしいという話がよくあります。検査現場で作業者の動きを観察するわけですが、人間の検査は単純でなく、頭を左右に動かしたり、ワークを微妙にズラしたりして光と照明の位置を変えています。 そして、表面の違和感を見つけて、そこをさらに集中して凝視しています。この一連の動作は人間だと一瞬でやってしまいます。 これを機械化するためには固定の照明とか固定カメラだけでは成り立たないケースがありますので注意してください。

 また、検査をした時の OK と NG の識別という作業もチェックする必要があります。意外と人間の作業というものは、判断基準が怪しいところが実のところあります。例えば、昼勤の田中さんと夜勤の鈴木さんの判断基準は若干違っているというような状況です。OK と NG の境目というのは、非常に閾値が明確でなく微妙な感覚で OK/NG としています。機械にすると完全に定量的に OK か NG かを出すことができますけど、機械ができた後にこれで仕分けられた製品はOKでないとか、NGでないと言われたりするのが常にあります。検査装置をクリエイトする場合は、まずその製品の OK /NGをしっかり明確に判別した品質保証書とか入ったものを確認して、スタートする必要があります。

スピードが肝心、ケツの穴が小さいといつまでたっても固まらない

機械の構想・設計の場合、検討時間も制約を受けています。見積もりを今月中に提出するとかいろいろなマイルストーンに合わせる必要があります。構想力がない人はすべてにおいて心配で思い切った絵を描けないこともあります。一日デスクに向かっていてもアイデアも出ずに線の一本も引けないこともあると思います。ブラケット一つとっても剛性が心配でFEMで計算しないと心配でたまらないとかあります。 こんな状況では日程だけが過ぎて行っていつまでたっても全体イメージが固まりません。 

先のテーマで、構想図は1枚でなく何枚も描いて絞り込んでいくことを紹介していますが、ある程度勇気をもって絵を何枚も描いていくことが大切です。それを複数枚描いたり、一歩下がって見直したりすることを繰り返すうちに形が見えてきます。 このスピード感を磨く訓練は、いつも構想図を他の人や部下に任せていて、それに対して口を出すだけで仕事をしている方は要注意です。いざ自分が構想を進めようとしてもなかなかできないです。

ライン全体に関係する基本的な重要寸法を早く決める。後で致命的不成立が発生し、全滅する

機械の全体構想を考えるときに、すべての工程をざっくり検討して、搬送高さや各ユニットの動作領域などを決めていきます。 そのうえでワークの搬送やセットの高さの目途を立てていきます。 こうして重要な寸法を決めていきます。ワークの加工高さ、搬送する高さ、工程間のピッチなどは最重要寸法です。成立性の安全寸法ばかりで決めてしまうとサイズの大きなラインになってしまいます。この重要寸法を決める感覚を磨いて早い段階で決定します。

 早く決定して、自分一人で検討してきた全体構想を組織全体の構想設計者にばらまくことができます。

たくさんの「引き出し」を持つ

機械の構想・設計者の場合、たくさんの「引き出し」を持つことが重要です。引き出しの事例を3つほど説明いたします。

① 機械全体をさっとイメージできる感覚を身に付けることです。クリエイターにとって明確な正解はなく、いろいろな選択肢の中で最適な構成を考えていくことになります。時間をかけずに、大きさ、重さ、力、たわみ、速さなどがサッとイメージできることが構想力を上げることになります。一瞬でサイズなどが思い浮かぶことが大切で、すべてを解析に頼らずに、感覚と実際が合う訓練を続けることです。

② あらゆる構造物、機構に関心を持つことです。普段からいろいろな製品、工場、ライン、機械を見て把握しておくことで、一瞬でたくさんの構造・機構・デザインが思い浮かぶことが可能になります。

③ カタログを熟読することです。いろいろな機械要素や機器、部品などのカタログとかを読み込んでおいてください。 すべての機器をオリジナルで構想設計するより、まずは市場にある完成された商品を利用することです。これらの製品は、十分に検討評価されて製品になっているのだから、良い構造・スペックのはずです。こういったものを最適な状況で、最適な場所で使用できるよう普段から勉強しておきましょう。

機械の概算金額を見抜く

設備の原価感覚を身につける

 機械の原価感覚も身につけることが必要です。通常、機械に作るために発生する金額といったものは、購入品、組織内の工数の足し算で見積もりが決まってきます。各詳細項目をそれぞれ割り出して足し算していくと言った計算方法です。しかし、だいたい機械を見た時に、この機械は原価いくらぐらいだという感覚を身につけることができると便利です。

代表的な設備の形と原価を記憶しておくことです。主な機械要素の価格、特に高額な機械要素を把握しておくと便利です。それに加えて、標準的な作業工数もある程度把握しておいてください。 設計工数、電気設計の工数、プログラムの工数、据付費用、立ち合いで関わる手間の時間を置いたものを代表設備で頭に入れておくわけです。

そして、開発的なモノ作りとか、やり直しとかが発生しそうな物件は当然たくさんあると思います。 その辺の繰り返し工数とかやり直し工数とか、いわゆるリスクといったものを頭に入れておく必要もあります。大きなコスト的な失敗する物件としては、この辺のリスクの読みが甘くて、とんでもない損害をこうむるといったケースが多いかもしれません。

設備設計者のあるある

設計時の過去図面を流用するときの注意

 設計者は新しい機械を創造するより、前の図面を採用することが多いです。新しい物で失敗を起こすより、実績ある要素を使用することで、リスク回避するためです。ただ、不具合発覚時は、転用したせいもあり自分の責任だけとは思わずに、前の設計者にも責任を押し付けて自分は主犯ではないとの正当化を行うかもしれません。設計者は設計段階での過去図面の転用時はプロセスと図面内容をしっかり把握して責任を持つことです。

 機械設計者が行う会議体で「設計デザインレビュー」というのがあります。これは、一人の設計者が考え抜いて描いた図面の中にもまだまだ不具合の危険性を含んだ項目がたくさん潜んでいるため、自主的にこれを関係者やベテランの方に見せて、周りから意見をうかがうという行動です。周りから気づきや助言をいただくことで「あー助かった」という事例は多いです。 過去の事例や転用する図面の紹介があることも多いです。

 心理学の世界では「ジョハリの窓」という対人関係のモデルがあり、自己分析・理解を通して他者との関わり方を考えています。 「ジョハリの窓」には自己の領域を4つに分けています。これを参考に設計デザインレビューの内容に当てはめてみました。

 「開放の窓」は、自分も他人も知っている問題点。これに対し「盲点の窓」は、自分は気づいていないけど他人は知っている問題点です。ここが非常に助かります。自分は知っているけど他人は知らない「秘密の窓」は図面に織り込み済みです。でも自分も他人も知らない未知の問題点は「未知の窓」になり、ここは後で機械が完成した後で問題発覚します。

 長年の積み重ねで「盲点の窓」を減らしていき、「未知の窓」をなくしていくと立派な設計者になれます。設計者にとってデザインレビューは耳が痛い、面倒くさいことかもしれませんが後で助かりますのでぜひ取り入れてください。

人の構想図にはなかなか従わない。 何か変えたがる

人が書いた構想図をもらって、自分の設計を開始するが、なぜか全く違う構想を描きたがるものです。多少の変更レベルではなく、全く別案を描き始めることもあります。 

 専用機械をクリエイティングしていく人たちにとっての面白さの一つは、 世の中に無い新しい機械とか形を生み出していくと言ったところにあると思います。したがって業務フローの中では、やりがいが一番感じられるのは、企画とか構想を練っているところだと思います。構想を練った後で、次の担当者に組図、部品図、出図を勧めてください、という効率を考えた業務の受け渡しが行われたとします。次の担当者は意外と前の人の構造図に、従わなくて自分なりの新しいを書こうとするケースも多いです。これはやはり自分で生み出すことに喜びを感じる性格から出てくることだと思います。従ってやる気のある設計者に対しては、企画構想からそのまま出図まで持って行くやり方がいいと思います。途中で担当を替えるのは、引き継ぎの段階でレクチャーとか無駄な工数が発生するところも覚悟する必要があります。

特許を申請しようか、特許になるか

特許をとれるかのコツ

 特許申請の資料作成にはレベル差はあるものの、2ヶ月は必要な結構大変な作業です。若手のエンジニアは一度申請に失敗するとがっくり来ますので、ベテランの方が今から申請しようとしている技術が特許に登録される可能性が高いことを見極めてフォローしてあげてください。

 まず、特許の技術はその会社、組織がベースにしているものの中から出ていると思います。この技術は市場に出て儲かる内容の商品につながるのか。すでに公開されている技術の中を調査します。 これは競争してる会社のみならず、他業種、他の製品など広く調べることです。人がたいてい思いつくことや、閃くアイデアは必ずと言っていいほど、どこかの誰かがすでに思いついているものです。

 特許申請後は、せっかく出した申請特許に対して拒絶通知が来ますが、多い内容が、従来特許技術の○○〇と〇〇〇を合わせて考えれば、容易に思いつく技術で、特許性はありませんという内容の拒絶が多いです。よく読むと同じような内容でも、構成が違う、からくりが入ってる、具体的に開催しているなど違いがあることを事前に見つけておいてください。

特許を申請するかどうか

1.資料作成にはレベル差はあるものの、2ヶ月は必要です。 これは、世の中にすでに存在する特許の調査活動に1ヶ月は必要です、その後、資料作成に1ヶ月程度必要です。資料はA4で20~30枚程度は必要ですこここで若手のエンジに合で気を付けることがあります。特許申請をして一度、登録NGになってしまうと二度と申請する意欲は失せてしまうことです。ベテランの方がしっかりガイドしてあげてください。同時に、ベテランの方は今から申請しようとしている特許内容が、特許に登録されそうかどうかの直感からのアドバイスが必要です。

2. 資料の中身の作成ボリュームは、今回の特許の背景説明で3割のページ数が必要です。いきなり革新技術に説明を振っても読む人はわからないため、この技術の背景、どういった機能についての話か、使用するケースなどを全く知らない読み手にガイドして導いていく文章です。例えば、エンジンのボアのことについてを事例に挙げると、説明のガイドでは、自動車 →エンジン →ブロック →加工 →ボアの不良についてというように話をガイドしていくことです。

  次に、従来の話をまとめるのに2割のページ数が必要です。 これは今まではどういった機能、動き、工夫でこの作業をしていたのかを説明するページです。この後で、初めて今回の特許の説明5割ほどのページを割いて、機能、動き、効果、多との違いを述べていきます。

3. 特許を成立させるためのちょっとしたコツはあります。一つは、従来技術の特許事例を一つか二つを取り上げることです。これについて違いを説明してください。効果とか嬉しさ、構造の違いを述べていきますが、その中に重要部分の一部だけでも具体的で詳しい技術を入れ込んだ説明分を入れてください。機構、動きの説明、従来の悪さをカバーする説明文も追加します。一部の具体的技術を武器にすることもあります。従来の特許でも似たようなものがあったりしますが、具体的ではなく抽象的に成果だけなぶったものも見受けられます。 比較特許には、ここまで詳細に明記されていないという理由で拒絶を跳ね返す。

特許は拒絶が面倒くさい

4.拒絶のコツ

 特許申請の提出後は2~3年後には、必ず1回以上は他社、または特許庁から来てしまいます。よく読みこめば従来特許との違いは必ずあります。 そこを正当化することです。提案し文章を作った人が責任を持って反論を考え、資料を作成することです。  ここがかなり負荷のかかる作業です。また、拒絶を受けてからは、最初の絵を追加することは出来ません。 絵の中で文章のみ追加説明して打ち返すことになります。 したがって初めの申請の段階で、かなり細かく絵を入れたり、説明を入れておくことが重要です。また、最初の申請時に従来特許の調査リストを載せることも大切です。 概要から細かい点、主な事例、具体的装置などの話を入れておくのも大切です。たいてい請求項目は他の特許と重なって潰されたり、容易に考え出される内容で特許性がないと拒絶されてきます。  どこか細かいポイントが生き残り、そこに特許性を主張することです。はじめから分野を絞り込んで出すことも技であります。ところどころ ○○mmが望ましいと言った表現を入れておくのも良いです。

特許事務所をうまく使おう。 但し下手な使い方は大失敗のもと

 5.特許事務所の使い方

 特許の申請をするときには、難しい構成や手続きもあるために、たいていは特許事務所に依頼して提出することになります。ここでは特許事務所に依頼するときの注意を記載します。複雑すぎる絵は、特許事務所に説明するためだけに使用し、申請に直接使用する絵は単純にわかりやく作成してください。 設計図面をそのまま載せるのは避けてください。あまり具体的な図面を載せると、逆にまねをされるケースもあるから注意してください。

 特許事務所の人は文章のプロであって、専門技術のプロとはあまり思わないでください。依頼するからと言って口頭でダラダラと説明してもうまくいきません。何回も修正したり打ち合わせしたりして逆に工数が多くかかります。 申請する自分自身が、80~90%の文章、資料を作成するつもりで資料を造って丁寧に特許事務所に説明下ください。通常の会社の会議のつもりで、だらだら説明して依頼すると、修正の山になり、かえって手間になる。 横着したら、倍返しになると思うことです。

大手の会社との特許併願について

6.大手の会社と中小企業の競願の特許の場合での考えることについて説明します。

 中小企業にとって、できれば特許は単独がよいケースが多いです。メリットは、特許を使った機械や商品が他の大手の会社にも自由に市場に展開できます。

ただし、よくあるケースで共同で開発が開始される場合、中小企業は大手のお客様からオーダーをいただいて開始するケースが多いです。その場合は初めから競願で進めることになります。 中小企業の方が、いくらアイデアは当社が考えたものといっても、お金が含まれている場合は競願になります。 大手の技術者が中小企業と開発を共同で進める場合について説明します。中小企業にとって、大手のお客様から開発依頼が来たときは、すでにお客様が特許申請しているケースが多いです。また、大手の複数ある組織体で開発が進むときのケースです。開発する部署はそれをメインに開発を続けてきて、量産化になるタイミングで開発部署から計画部署、そのあと生産工場部署と担当が移管されてくるケースの場合です。大手の会社では、特許もノルマ的に年に○○件とか開発に躍起になっているケースもあります。 実際の量産工場に責任が移管されて着る頃には、最初の開発部署が先に特許は自分たちの名で申請していることがタイミング的によくあります。 開発部署の担当者が特許をとり、計画部署の人が実業務で苦労する間で、しがらみが出ることが多いです。 生みの苦労と育ての苦労の両方を知って行動することが大切だと考えます。

大手企業の特許はかなり厳選されている

7.大手企業の特許はかなり厳選されています

 大手のから出て得いる特許は、文章、説明絵、グラフやデータなど力の入れ具合が違う。その背景は、大手は特許申請から特許登録の打率にもこだわっていて、無駄なお金を出さないように、知的財産を専門で事前チェックする機能が厳しいケースがあります。つまり、中小企業の小さな組織から申請される特許に対して、大手の特許申請は、事前に特許事務局をチェックされて厳選されて提出されています。 まず特許の登録まではたどり着くケースが多いです。 しかし、最初の段階から説明資料が重くて工数が係りすぎます。若手のエンジニアにとっては、せっかく数か月もかけて作成した特許申請の資料が一度却下を食らったら二度と提出したくなるのであります。

 また、特許を隠すという選択肢もあります。市場に製品として多く売り出される製品特許については、他社が真似をすると発覚しやすいです。 しかし、生産技術的な特許は真似してもその会社の秘密にされている工場のないぶで使われるだけのために、分からないことが多いです。工場自体を公開してないから外に真似したことがばれることは無いということです。ここは、企業倫理の問題であります。素晴らしい発明ができて、特許申請をしようと考えているときに、あえて特許を申請しないという選択肢もあります。

展示会で勉強しよう   見に行くのと主催するのと違い

展示会調査は勝負の場

モノづくりに携わる方は、いろいろな場所で実施されている展示会に多少なり見学に行かれてると思います。市場の方向や最先端の技術が紹介されていますので、カタログやネットの情報より百聞は一見に如かず ということで、展示会に見に行かれて、現物を見て説明員に問いかけてみるのが良いでしょう。

  • 世の中の技術調査をするのに、一番精度が良く確実に情報をゲットできるのが、展示会への調査活動です。
  • 百聞は一見にしかず。 下手な新聞記事やネットより、現物とヒアリングのほうが一発でポイントがわかります。
  • 各メーカーが自社の最新商品を説明すると同時に、現在開発中の商品も参考出品ということでお披露目していることもあります。
  • 今の時代では、コンペチターの商品だからとか言っている時代ではなく、協力会社としてパートナーになっていただいたり、逆にお客様になっていただける会社が見つかるかもしれません。自社単独でないせいでやりきるということだけでは乗り切れない時代になっています。

自分が見て回る時の注意

  1. 常に現在進行中の業務を自分事として悩むことで、展示品を見ていてひらめくことが多いです。 ベテランにとって、悩んでいないと、展示会はただの観光旅行と同じです。
  2. 自分の業務内の展示コーナーだけでなくすべてを見たほうが良いです。他業種や関係の技術からもヒントがたくさん得ることができます。
  3. 技術を広くバランスよく知っている人の方が、ポイントをかぎ分けれます。若手のエンジニアの勉強で展示会に出席する効果は多いです。しかし、技術調査や現状の困りごと解決のための見学には、展示会に出席して全体を見渡して、レポートをまとめられる数少ない人が、展示会で調査する成果が見込めることが多いです。たったの4~5時間で全てを把握し、ポイントを深掘りし、過去に比べてどの辺の技術内容がが変わったかをちゃんとまとめてレポートにして、みんなに展開できる人物が本当に展示会に出席した方がいい人である。 若い技術者が数の勉強のために出席とするというのも一つ狙いではあるが、会社の方向とか新商品とかの動機付けに行くためには、やはり調査してくるべきであります。 
  4. 毎年通うことで、より変化や方向のヒントがつかめれます。同じ展示物でも年によってニーズの方向が変わってきている事もある他業種や関係の技術からもヒントがたくさん得ることができます。 近年の産業機械の展示会では、はやり言葉も変化してきています。画像処理 → AI、IOT → スマートファクトリー → カーボンニュートラル
  5. 展示会は多くの内容があるために結構時間的に厳しいものがあります。 ポイントだけ素早く質問することが大切です。 説明員は当然ゼロから説明しようとします。 効率的に回るためにはいきなり突っこんだ質問をした方が、この人は良く知っているからといきなり知りたい点の説明をしてくれます。
  6. 注意点は、展示会を回って名刺交換した後は、メールと電話がたくさん来ることを覚悟してください。また、展示会を回った後は、見てきたポイントを必ず自組織に展開をお願いします。ただ、とってきたカタログを回覧するだけではだめですよ。出張したら必ず資料をまとめて、10分以内で出張報告を実施することで、皆の記憶に残ります。

自社が展示する時の注意

  1. ただ見に来ているお客様と購入検討のお客様と違いが判ると思います。皆さんに丁寧に説明するのが当然でしょうが、短い時間でブースを回られている購入検討中のお客様はしっかりと説明対応させていただきたいものです。 購入の感触のあるお客様は、質問が痛いところを突いてこられるので、感触はつかめるはずです。 詳細が答えれないときはすぐに技術担当者にバトンタッチすることです。
  2. 通り過ぎていくお客様には、初めはワンポイントセールスの一言でお客様をつかむことです。
  3. お客様からの質問で、奥が深くなってきても、ネガティブにはならないことです。技術者が説明しだすと、リスクが頭に浮かんできて、なかなかポジティブにはなれなくて、言葉に歯切れもなくなってくることが多いです。しかし、報告会ではないのですから、ネガティブ連発でお客様が離れていっては元も子もないです。
  4. 展示会で自分の会社のブースを出すときは、商品を売る目的と会社の知名度を上げる目的と二つあります。自社の商品で和kるような技術力をあポールして、この会社ならお客様の自組織の困りごとにも対応できるのではないかと思っていただくのも大切です。   
  5. 顧客様には丁寧に説明してください。 しかし、他のお客様もおられますので雑談目的にはならないことです。

展示会に来られるお客様に対して

 展示会に来れれるお客様の分類をしておきます。

❶ 買うつもりで来られたお客様

社交辞令ではなく、鋭い質問をしてこられます。 日々困っておられる方なので、能書きを無視していきなり核心の質問が来ます。 よくお話を聞いて対応可能な前向きな話にしてください。

❷ 技術に関係はするが、特にこの商品に興味を持たれてない方

なんとなく興味ない感じで聞いておられるが、話の中のある技術ポイントで態度が豹変することがあります。業界が違うのだが、これはヒントになると思い出したように核心を突いた質問が来られます。可能性は低くても生産のことは知っておられるので、いきなり核心を多少ハッタリ気味に説明して、お客様の反応をうかがうことです。 そして、現場の状況や困りごとの内容についての情報を聞き出します。

❸ 冷やかし、なんとなく

やたらほめたり、感心したりして去っていかれます。 説明員は説明を簡単にして、くどくど言わないことです。

❹ コンペチタ―で特定の商品の調査に来られた方

効果、目的の質問より、機構や構成、使用している機器について聞かれることが多いです。また、気が引けるのか、遠くから見ていてカタログだけとっていかれる方や、話していても名刺は切らしたとか言って去るられる方もおられます。あまり奥の話はしないように注意して、場合によっては、自分は詳細な技術のことは詳しくないふりをして、話をごまかしてしまうことも大切です。


“第4章 機械のクリエイト2” への1件のコメント

  1. こんにちは、これはコメントです。
    コメントの承認、編集、削除を始めるにはダッシュボードの「コメント」画面にアクセスしてください。
    コメントのアバターは「Gravatar」から取得されます。

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。